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ウェス・アンダーソン『ムーンライズ・キングダム』(2012年)

バルト9のミッドナイト上映でウェス・アンダーソンの新作『ムーンライズ・キングダム』を鑑賞。

ミニチュアの世界のように完璧に作り込まれた画や唐突なアニメーション、形式的なカメラワークにどこまでもウェス・アンダーソン印を感じ、これまでの集大成といった趣を感じさせる傑作。最初から最後までどのシーンも本当に素晴らしかったのだが、ベストシーンにはやはりあのキスシーンを挙げたい。わたしはウェス・アンダーソンの撮るキスシーンがとても好きで、なぜならばまるで自分がキスをしているかのような生々しさが感じられるからなのだが、今作の主人公の少年と少女が舌を少しだけ絡ませるフレンチキスの際どいエロさにも、不覚にもかなりドキドキさせられてしまった。文通シーンのテンポの良いカットバックや草原で落ち合うシーンの遠景のショット、頻発する形式的な切り返しショット等、距離をもって捉えられてきた二人が同じフレームの中に収められて距離をなくす。この瞬間に客席が恥じらいの空気と共にパっと色めき立ったように感じられたのは、きっと錯覚ではないはず。

「まるで自分がキスをしているかのような生々しさを感じる」ということは、いくらキスをしても映画を観ることでしか味わうことのできない希有な体験である。キスばかりしている人も全然キスをしていない人も、あの瞬間を目撃すべくぜひ劇場へ足を運ばれたし。