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2014年上半期、よかったCDのまとめ

早いもので2014年も上半期が終了しようとしています。6月はもう新譜を買う予定はないので、ちょっと早いですが上半期のベストを選出してみたいと思います。購入した新譜は35枚。その中から特によく聴いた10枚を挙げてみます。

 

ゆめ

ゆめ

 

 まずはLampの『ゆめ』。いまや最も新譜を熱狂的に待ち望まれているバンドのひとつとしても過言ではないような気がします。発売直後にAmazonに一斉にレビューが上がっていたのもその証左。自分がLampを聴き始めたのは『八月の詩情』が出る前からなので、新譜として聴くというのはこれが3回目なのだけれど、Lampの新譜を聴くときはいつも少しの緊張が伴われ、いつも期待は裏切られない(あるいはいい意味で裏切られる)。前作の『東京ユウトピア通信』はメロディーとリズムが完璧に絡み合うとんでもない傑作だったけれども、今回の『ゆめ』も素晴らしいです。前作のようなある種の過剰さは少なくて全体としてはマイルドでひたすら良質な印象を受けますが、「A都市の秋」のスリリングな展開や「6号室」の夢見心地なコーラスワークの美しさなど、何度も何度も再生したくなる中毒の極みのような要素が詰まった曲たちが揃っています。「シンフォニー」と「さち子」という、永井・染谷両作曲家の大名曲が冒頭とラストを飾るという構成も良い。当然のように今年のベスト候補です。

 

ささやき

ささやき

 

 お次はミツメの『ささやき』。ミツメというバンドはとても不思議なバンドで、他のバンドと比べて圧倒的に冷めている。しかし、その「冷めている」ということは決して演じられた冷たさではなくて、あくまでも自然体としての冷めているのです。それが音にも強く表れていて、決して大きな盛り上がりを見せずにシュンと終わってしまう。例えばファーストに収録されていた「クラゲ」なんかは最後のギターソロで一定のカタルシスを得ることはできるのだけれど、本作ではそうした瞬間は皆無かもしれない。それがどこか物足りなく感じたりすることもあるのだけれど、ここまで徹底した「冷たさ」から醸し出される空気感というのは、今の時代にとてもマッチしているような気がして、実際気がつくとふと流していたいたことが多かったように思います。そしてこの冷たい空気が気がつくと自分の中に強く染み入っていたという、そんな1枚です。

 

Sick Team II

Sick Team II

 

 次はS.L.A.C.K.、ISSUGI、BudamunkからなるSICK TEAMの『SICK TEAM Ⅱ』。新録曲とリミックスからなるアルバムとの事だけど、前作を聴いていなかったので全く新鮮に聴きました。SICK TEAMは他の日本のヒップホップに比べてひたすらクール。例えばPUNPEEは言わずもがな、S.L.A.C.K.のソロ作でも多少のユーモアのようなものがあるように思うのだけれど、このユニットはそうした要素を排してひたすらクールなアルバムになっています。こうしたところが好みの分かれるところかもしれないけれど、熱かったりユーモアがあったりと意外にも感情に訴える音楽が多いように思える日本のヒップホップの中で、こうしたひたすらかっこいいだけのヒップホップって実は結構特異なのではないかと思います。

 

Page2:Mind Over Matter【初回限定盤(DVD付き)】

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日本のヒップホップからもう1枚。「ファーストは習作、セカンドでぶっ刺す」とラップしたのは田我流だったけど、まさにそんな飛躍を感じさせる1枚。1曲目のクールなトラック(Badly Drawn Boyがサンプリングされている?違うかな)から2曲目の「Avengers」でぶち上がりまくる展開は問答無用にかっこいいし、そこから60分を優に超えるボリュームでありながら最後までだれることなく聞き通すことができます。MCがたくさんいることの利点も十二分に発揮していて、クルーとしても充実を強く感じさせらるアルバムです。ライブが凄く楽しいし。この前のBrainfeederのイベントでもアゲハのデカいステージがよく似合っていました。

 

戦前と戦後

戦前と戦後

 

 SIMI LABのOMSBとDyyPRIDEも参加した菊地成孔とペペトルメントアスカラールの新作。歌ものとラップ中心のストレンジラテンオーケストラ。これが本当に素晴らしかった。そもそもオリジナル曲から薬師丸ひろ子キップ・ハンラハン、フランク・オーシャン、ディック・ミネというカバー曲の選曲をアコースティックオーケスオラで彩ることによってここまで統一感のあるアルバムに仕上げることができるのは菊地成孔さん以外にあり得ない(クラスターノイズからオペラまである)。それが昭和なのか異国の地なのかわからないけど、郷愁に誘われてひたすらロマンチック。スパンク・ハッピーをはじめとする菊地さんのラブソングが好きな人に強烈におすすめしたいです(「僕が守ってあげるからエゴサーチはほどほどにね」なんてフレーズ、最高じゃないですか?)。特に覆面女性ラッパーのI.C.I.の透明感のあるラップと菊地さんの甘いラップのデュエット曲「I.C.I.C.」はスパンクスのあの感じを想起せざるを得ない。あと余談ですが、失敗しない生き方の『常夜灯』もいいアルバムだったけど、成熟度の差はあれど意外にも彼らのやっている音楽は菊地さんの音楽と共鳴するところがあるんじゃないかと思いました。単なる思いつきですが。

 

Indie Cindy

Indie Cindy

 

 雰囲気はガラッと変わってピクシーズの復活作。巷間、賛否両論のこの作品ですが、わたしはとても好きです。そもそもピクシーズが再結成すると聴かされてもあまり大きく盛り上がることができなかった自分でして、このアルバムについても当初はあまり興味を示していたわけではないですが、発売直前に見たコーチェラのピクシーズのパフォーマンスに吃驚するくらい感動させられて、即購入商品にリストアップされました。実際に音源を聴いてみると確かに取り憑かれたように聴きまくった「Surfa Rosa」や「Doolittle」のような魔力はないけれど、一部で酷評されるほど悪い作品じゃなく、鋭利なギターサウンドと重厚なロックサウンドにブラック・フランシスのキュートなメロディーと歌が乗っかる紛れもない「ピクシーズの音楽」で、先鋭的でなくなったというよりはむしろ成熟を感じさせる作品になっていると思います。

 

Moodymann

Moodymann

 

 お次は安定のムーディーマン。例えばソウルやファンクは好きだけどクラブミュージックは全く聴かない、という人におすすめしたいです。ファンク〜ハウスという「反復」というキーワードで紡がれるブラックミュージックの歴史の正統的な請負人。ここでも「先鋭的」であることが必ずしもいいことでないと言いたくなります。たとえばフライング・ロータスは1時間聴けば満足するけど、ムーディーマンは何時間でも聴いていられる。先日のレインボーディスコクラブでの来日を聴きにいけなかったのは本当に心残りです。

 

ベーチュ

ベーチュ

 

 お次はフェネスの5年振りの新作。『エンドレス・サマー』を超えた?かどうかはわからなけど、繰り返し繰り返し聴いている良盤です。こういうアンビエント/ノイズ系の音楽で毎日聴ける音楽っていうのはあまりないように思うけれど、これはかなり聴いています。おそらくそれはフェネスの音楽が身体の快楽に訴える音楽というよりは寧ろ、人間の感情に訴えるタイプの音楽であるからのように思います(少なくとも自分はそう聴いています。フェネスの音楽には感動させられる)。フェネスはギタリストなんだなっていうのを強く感じさせる1枚にもなっています。

 

car and freezer

car and freezer

 

 もう死んだ人たち(ジム・オルーク、須藤俊明、山本達久、波多野敦子)をバックに従えた石橋英子のソロ名義の2枚組(同内容だけど片面が日本語詞、もう片面が英語詞という構成)。前野健太も日本語詞とコーラスで参加しています。マエケンのバックバンド繋がりで興味を持って石橋英子さんのソロ作を今回初めて聴いたのですが、これが聴いたことがあるような/ないようなのラインの絶妙な線をいっている奇妙なポップス集で、大貫妙子を思い起こさせるような軽やかさを持ちつつ、一筋縄ではいかない曲の展開に病み付きになります。末永く聴いていけそうな普遍的なアルバム。

 

いじわる全集~初回限定盤

いじわる全集~初回限定盤

 

最後に先日も紹介した柴田聡子『いじわる全集』を。ここ最近はこればっかり聴いています。 聴けば聴くほどに生活に馴染んで味わい深い。例えば朝起きたばかりの時間とか仕事で疲れて帰宅した後の時間とか、あまり音楽を聴きたくない時間ってあると思うのですが、そういうときですら(そういうときでこそ)聴きたくなる音楽です。いつ聴いても馴染む音楽ってそうそうなくて、最近は自分の生活がこのアルバムの心地よい空気感に支配されているといっても過言ではないくらいです。オーガニック系の音楽の心地よさとは違い、生活に根ざした適度な躁鬱感に色気を感じます。名盤です。