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ザ・なつやすみバンド『パラード』

パラード

 

ザ・なつやすみバンドの『パラード』が素晴らしいです。

あいだに『めくらまし!』『サマーゾンビー』というシングルが挟まれていたものの、前作『TNB!』からは3年近い年月が流れて届けられた新作アルバム。3年という年月が取り立てて長いとは思わないけれど、こうして新作アルバムとして手に取ってみると自分が「ザ・なつやすみバンドの新作」を待ち望んでいたことがよくわかり、その期待を大きく上回ってあまりある作品の深化の度合いに、ただただ興奮し感動させられるばかりであります。発売されてから20日程経過しておりますが、ほとんど毎日聴いています。全く飽きないのである。

前作『TNB!』はファーストアルバムにして全曲シングルカット可能なクオリティーを持つ初々しくも素晴らしい作品で、ぼんやりとしたセンチメントを携えた歌詞と透明感のあるボーカルにスティールパンのトロピカルな音色が楽曲を彩り、過ぎ去って行く時間に追い付いていけない、まさになつやすみが終わってしまうときの呆然とした気分が、切なくなりすぎず軽薄になりきれない絶妙な塩梅で描かれていた。例えば1曲目の「なつやすみ(終)」はこんな歌い出しだったー「物憂げな犬と 歌わない鳥たち からっぽなわたしと どこか似てるんです また過ぎ去る夏に 呆然とする 涼しい風が今日 やってきました」。強引に言ってしまえば、『TNB!』ではこの歌詞に象徴される「過ぎ去る時間に呆然とする、からっぽなわたし」という強い自意識とそれが投影された世界がアルバムのカラーを彩っていたように感じられる。

今作『パラード』においては、「過ぎ去る時間に呆然とする、からっぽなわたし」から一歩も二歩も踏み出した新しい世界が描かれている。蝉の鳴き声のサンプリングから始まる「なつやすみ(終)」に対比されるように、『パラード』の1曲目「SEASONS」は鳥の鳴き声と川のせせらぎのサンプリングで始まる。歌い出しはこんな感じだー「湧き出る水の方から 雨期がサンキューって言えば 流れ出す あの日の幻 舞い上がる飛沫の方から 乾期がグッバイって言えば 語りだす太陽のあとがき」。どうでしょう、この「わたしの対峙する世界」のスケールアップの度合い。それに呼応するように楽曲の構成、そしてそこで鳴らされる音色は複雑でより色彩豊かになっていて、続く2曲目の『パラード』のイントロはまるで世界のはじまりを告げるかのような音が鳴らされている。


ザ・なつやすみバンド - 「パラード」 Music Video - YouTube

 今作はあらかじめ曲順が決められて制作されたいうが、アルバム全体でひとつの組曲が奏でられているような統一感がある。先に「『パラード』のイントロ」と書いた箇所も、このMVではカットされており、「SEASONS」のアウトロとも言えるし、はたまたその2曲を繋ぐブリッジのようなものであるとも言える。良いアルバムというのは大抵がアルバム1枚でひとつの組曲を奏でているように感じさせるものである。特定のどのアルバムにというわけではないが、わたしにはこの『パラード』が、ビートルズの特に中期から後期にかけてのアルバムに似ているように感じられた。それはMC.Shirafuのトランペットの音色が中学生の頃に聴いた「Penny Lane」や「All You Need Is Love」を思い起こさせたからかもしれない(となると『Magical Mystery Tour』か)。あるいは、M6「S.S.W(スーパーサマーウィークエンダー)」とM7「かぜまちライン」のあいだに無音の時間を配置することにより、はっきりとレコードのA面とB面を意識させる作りとなっているからかもしれない。

 アルバムのハイライトは何度も訪れるが、ここではリズム隊のふたりによる作曲のM5「ユリイカ」を挙げたい。アルバムのインタールード的なインストナンバーと思いきや、軽快な歩調は徐々に速度を緩められこのように合唱されるー「唄え!踊れ!自由空間!集え広がれ ユリのように イカのように 星をめざせ!!」。そのあと再び歩調が早められて、等価の力で歌われる言葉の力強さと言ったら、全く胸を熱くさせられる。

 

 

パラード

パラード

 

 

サマーゾンビー

サマーゾンビー

 

 

TNB!

TNB!