三宅唱『THE COCKPIT』

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ユーロスペースにて楽しみにしていた三宅唱監督『THE COCKPIT』を観てきた。これはSIMI LABのOMSBとTHE OTOGIBANASHI'SのBimが共同作業でひとつの曲を作るまでの過程を追った音楽ドキュメンタリーなのだが、音楽に限らず何がしかの創作物に触れることが好きな人ならきっと楽しめるに違いない。素晴らしい作品だった。

普段自分が触れている創作物はどのような過程を経て産み落とされているのか?それは創作者、創作物によって千差万別であるはずだが、この映画で描かれる曲の生まれる過程はそのひとつの真髄を見事に炙り出しているように思う。それは、創作とは度重なるトライとミステイクによってブラッシュアップされたものである、ということだ。考えてみれば当然のことであるが、普段創作行為をほとんどせず完成品を享受するばかりの人間はついつい忘れがちなことである。創作物の創作過程に思いを馳せるということは少なからず専門的な知識がなければ難しいことであるとは思うが、創作が過程の産物であるという単純な事実を念頭に置くことと置かないことでは、受け取り方が全く異なるものになる。受け手として創作物をより深く味わいたいのなら、その過程に目を向けることは決して無駄ではない。

映画の中でOMSBはトライ&ミステイクを繰り返す。トラックのサンプル選びとビートの打ち込みからラップの吹き込みまで、何度も失敗しては常に冗談を飛ばし、時に頭を抱え込みながらも、すぐさまやり直す。カメラは時にカットを割りながらもその過程を延々と映し出す。映し出されるミステイクとトライの反復はある種の弛緩した時間を感じさせるものであるが、そうした時間も余すことなく映し出している点が映画的に重要なポイントである。なぜなら、一筋縄ではいかない創作の過程を映し出す長回しと随所に挿入されるハッとするようなカットは、同時にこの映画の編集にも同様の過程があったのだろうという気付きを与えてくれるからだ。映画の内容とその枠組みを意識した瞬間にスクリーンと現実は地続きになる。

それにしてもOMSBの才気の漲りである。この映画を観ていると、彼はカッコつけでなく、ヒップホップがただただ心の底から好きなんだろうなということがビシビシと伝わってくる。好きなことに真摯に取り組み、子供のようにはしゃぎ、苦悩する姿はとても生命力に溢れているし、気に入ったビートを掴まえたときの彼の表情や動きは、言わば動物的に色っぽい。生きることを謳歌する人間の姿は感動的であり、そうした人間が作った音楽は大袈裟でなく救いをもたらす。今年を代表することになるであろう傑作『THINK GOOD』もこの映画を観た後ではまた聴こえ方が違ってくる。『THINK GOOD』を聴いた人は『THE COCKPIT』を観に行って欲しいし、『THE COCKPIT』を観た人は『THINK GOOD』を聴いて欲しい。『THINK GOOD』を聴いていなくて『THE COCKPIT』も観ていない人は、すぐさま両方体験して欲しい。絶対に損はしない。

 

Think Good

Think Good