秋の夜長に聴く音楽。

10月も半ばを越えましてすっかり秋めいてきました。高校生くらいの頃から「気分や季節に合わせて音楽をチョイスできるようになりたいな」などと思ってきたものですが、もうすぐ30歳にもなると自然とそういった聴き方をしているものでありまして、最近聴いている音楽もどうやら秋めいたものが多いようです。そもそもその音楽のどこに「秋」を感じているのか明確な基準などないのですが、並べて聴いてみますとどうしても季節を感じずにはいられないから不思議です。気分が音楽を選ばせるのか、季節が音楽を選ばせるのか、音楽が気分を与えるのか、音楽が季節を感じさせるのか。おそらくどれが始まりというわけでなく、すべてがお互いに関係し合って螺旋状にムードを醸し出すのでしょう。そんな曖昧さから選ばれた音楽をとりあえず4枚。

 

Mum "Finally We Are No One "

FINALLY WE ARE NO ONE

FINALLY WE ARE NO ONE

 

アイスランドエレクトロニカバンドの2002年作。エレクトロニカと言えど、アコーディオンやヴァイオリンなど生音の割合も大きく、温かみのある電子音とウィスパーヴォーカルと相俟って、まったくもってベッドルームで聴くための室内楽。所謂ボーズ・オブ・カナダ的なエレクトロニカというよりは、クリンペライのようなトイポップ系譜に近いようにも感じる。 「森ガール」的なイメージと合致する箱庭的な世界観に当時はムームの音楽が好きでいることにちょっとした恥じらいを持っていたものだが、発売されて13年経った今でも聴かない年はない。ひとりぼっちの秋の夜長に深く深く沈むための音楽。

 

Nick Drake "Pink Moon"

Pink Moon

Pink Moon

 

 秋になるとSSWものを聴きたくなるのはなぜなのでしょうか。あまりにも有名で神格化されたこのアルバムを紹介できるような経験は自分にはありませんが、唯一言えることがあるとすれば、もしあなたがまだこのアルバムを聴いたことがないのだとしたらどうか聴いてみてください、そして再生した瞬間に流れるアコースティックギターの低く深みのある音像と直後に入ってくるボーカルの温かみと侘しさに驚いてください、ということだけ。

 

Judee Sill "Judee Sill"

ジュディ・シル
 

ジュディ・シルを初めて聴いたのは、たしか2000年代の半ばにジム・オルークによるミックスで彼女の3枚目のアルバム「ドリームズ・カム・トゥルー」が発売になった頃。ジュディ・シルは1979年にオーヴァードーズで亡くなっているので、死後かなり経ってこのアルバムが発売されたわけだが、それに伴ってジュディ・シルの作品が結構話題になっていて、その流れでこのセルフタイトルのファーストアルバムを聴いた。ジュディ・シルの音楽が他のSSWと違うところは、都市の香りが全くしないところである。たった一人でゴスペル音楽を奏でているような神々しさがある。都市の中の孤独みたいな甘っちょろいものではなく、もっと絶対的な孤独を歌っているかのうような神々しさ。今年出たスフィアン・スティーヴンスの傑作アルバム「キャリー・アンド・ローウェル」にも同じ空気が流れている。

 

Lantern Parade "かけらたち"

かけらたち

かけらたち

 

ランタン・パレードの出たてほやほやのニューアルバム。ビターでスウィートでメロウでサイケデリックなサンプリング・ソウル・ミュージック。 センスの良いメロウなサンプリングに繊細だが力強さも感じさせるヴォーカルのリフレイン。無茶苦茶良いです。後半に進むにつれてますますディープに沈んでいく展開は、秋の夜長に沈んでいく気分と綺麗にシンクロするようであり、ゆらゆらと揺れる蝋燭の灯を延々と眺めているような酩酊感を感じさせられる。