Oneohtrix Point Never 『Garden of Delete』

 GARDEN OF DELETE [帯解説・ボーナストラック1曲収録 / 国内盤] アマゾン限定特典マグネット付 (BRC486)

 

Oneohtrix Point Neverって一体どんな意味なんだろうかと思って辞書で「Oneohtrix」で調べてみたが、残念ながら辞書にはない単語だった。「One/ohtrix」で区切ってみても、「One/Oh/Trix」で区切ってみてもやっぱり意味を掴むことはできない。次にグーグルで検索をかけてみたら、Weblio辞書で項目が立てられている。さっそく覗いてみようと思ったのが束の間、書かれていたのはワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(Oneohtrix Point Never)は、ニューヨークブルックリン拠点とするミュージシャン、ダニエル・ロパティン (Daniel Lopatin)のソロ・プロジェクトであるという身も蓋もない言葉だった。結局、OPNの意味を巡ってぐるぐると廻ってみるだけで、結局その中心には辿り着けずじまいだった。

さて、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの新作である。前作『R Plus Seven』はミニマリズムを基調とした実にエレガントで気品のある作品だったが(音楽にしろ生き方にしろ、どうしてミニマリズムは気品を感じさせるのか?)、今作『Garden of Delete』はどうにもその真逆の作品が出来上がったように感じられる。前作が「洗練」であるならば、今作は「野蛮」。前作が「優雅」であるならば、今作は「粗野」。前作が「統制」であるならば、今作は「暴走」。と、ついつい型にはめて言い表したくなるほど、今作と前作は綺麗に対を成しているように感じられるのである。野蛮で粗野で暴走しがちな音楽という形容は、何となくフリーキーなロック・ミュージックを想像させるが、三田格のライナーノーツによれば、今作は「『不安とグロテスク』をテーマとし、そのためにロパティンは自らがメタリカデフ・レパードを聴いていた時期へ、つまり、思春期へと遡行していく」過程を経て出来上がったものだそう。なるほど確かに今作の感触はヘヴィメタルに似ている。思春期にヘヴィメタルを経由してこなかった自分にとって、今作のメタリックな音像は初めて聴いたときは少し頭の痛くなるような思いもするくらいのものであった。

…とここまでが本作を一聴して得た印象であるが、「イーノの正統的後継者」と呼ばれる男OPNにあっては、ヘヴィメタに接近したエレクトロミュージックと呼ぶだけでは余りにも零れ落ちるものが多すぎる。この音楽は何かを足して二で割ったような安易なジャンルのドッキングではない。それは、この分裂的で、折衷的で、恐ろしく異形な音楽を聴いてみれば明らかであるだろう。多くの人がそうであるように、内省を伴った思春期への遡行は強い痛みが生じる。上に引いたような過程を経て作られた今作は、ロパティンにとっての痛みが少なからず反映されているものであるだろう。しかし、そこに拘泥することなく現在に帰ってきた人間の作る音楽は、優れて批評的な何かを感じさせる。何度も聴いて作品の全体性を少しずつ把握する内に初めの印象は反転し、もしかしたらこの音楽は、実は物凄く「洗練」され「優雅」で「統制」の取れた音楽なのではないかと思えてくるから不思議である。だとすると巷間喧伝されるように前作からの「完全なネクストレヴェル」という表現も腑に落ちる。「Oneohtrix Point Never」の意味が掴めないように、もう少しこの音楽を繰り返し聴きながら、その意味を巡って周辺をぐるぐると廻ってみる必要がありそうだ。

 

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R Plus Seven [帯解説・ボーナストラック1曲収録 / 6面デジパック / 国内盤 ] (BRC394)

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