最近の収穫(9月後半)

・ブラッド・オレンジ『フリータウン・サウンド』 

フリータウン・サウンド

フリータウン・サウンド

 

 11月に来日するブラッド・オレンジの新作。前作『キューピッド・デラックス』も名作だったが、今作もそれに優るとも劣らない良い作品である。各曲の間にラジオをチューニングしているようなスキットめいた具体音が入っていて、それが良いアクセントになっており、『フリータウン・サウンド』と銘打たれたこの作品が「街の音楽」なのだということを強く感じさせてくれる。メインでボーカルを取るのはもちろんデヴ・ハインズなのだが、多くのゲストボーカルが参加しており、その点はデヴ・ハインズのプロデューサー気質の面目躍如というところ。それによってポリフォニックな街の表情が浮かび上がってくるような仕様となっている。「フリータウン」というのは彼の父の故郷、西アフリカのシエラレオネの首都のことなのだそうが、そのことから想像させられる彼のルーツへの遡行という個人的なテーマは決して閉じられたものではなく、多くの人に共感を持って開かれたものなのだということがこの音楽からは伝わってくる。それはこの音楽がR&Bを基調としながら決してひとつのジャンルの模倣ではなく、ときには80sのニューウェーヴのような響きを持ったり、ときにはベッドルームポップスのような響きを持ったりする音楽的な多様性を包摂している点、そしてどこまでもアーバンでありどこまでもプリミティブであるという相反した印象を持っている点に由来しているだろう。

話は逸れるが、彼のパフォーマンスをユーチューブでみたときまるでジミヘンのようにギターを弾きプリンスのように歌う男だなと思ったのだった。何れにしても今年の超重要盤。来日公演が今から楽しみです。