最近の収穫(9月後半-②)

ティーンエイジ・ファンクラブ『ヒア』

ヒア

ヒア

 

 ティーンエイジ・ファンクラブの新作。何でも6年ぶりの新作であるらしいが、特にその点に感慨を得ないのは自分にとってTFCが「新作が楽しみなバンド」ではないからだろう。もちろんTFCは大好きなんだけれど、TFCの音楽というのは革新性とは無縁で、次にどんなことをやってくるんだろう、みたいなワクワクが全くないバンドなのである。それなのに新作を買ってしまうなんて、よっぽど俺はTFCが好きなんだろう。今作においてもTFCの音楽に何も目新しさはない。TFCを知らない人にTFCのアルバムを全部聴かせて年代順に並べさせるゲームをやって全部完璧に当てることができたら、俺の持っているTFCの音源を全部あげてもいい。それくらい何も新しさがない。

しかし、である。この新作から聴こえてくるのは、決して変わらない、揺らぐことない美しいメロディーと歪んだギターと優しく切ない歌声である。無意識に忙しなく刺激を求めてしまう自分を一瞬で忘れさせてくれる時間が針を落とした瞬間に始まる。考えてみれば不思議である。俺はずっとTFCの音楽は日常に寄り添う音楽だと思ってきた。今日のような雨の降る日に聴いてみると少しだけ憂鬱を和らげてくれるような、あるいは小春日和に聴いて気分を少しだけ浮つかせてくれるような、そんな音楽だと思っていた。否、正確に言えばこれまではそうした側面しか聴いてこなかったのだ。初めて彼らの音楽を聴いてから大分経って自分も年を取った今になって思うのは、この音楽は実は決して「普通の」音楽などではないということだ。つまり、苦楽交々の人生を普通の顔をして生きるのは難しいはずなのに、こうして「普通に良い音楽」に昇華し続けてしまう彼らの懐の広さはどう考えても普通ではないということ。彼らの「普通に良い音楽」はあまりに自分の日常からは遊離している。だからこそ尊く感じ、胸を痛め、そこに近づきたいと思うのである。