Walky-Talky's Journal

INDIE POP FANCLUB

2018年2月に聴いた音楽

マンスリーレビュー2月分。2月前半はThe XXとFather John Mistyの来日公演があったのでそれ関連の音源ばかり聴いていた(どちらのライブも最高だった)。後半に入ってようやく最近の新譜を聴き始めて、それらがどれも繰り返し聴くに値する名盤ばかりだったもので、まだまだ今の段階で消化しきれていないのが現状。ということで、今月はよく聴いた2枚だけについて。

 

MGMT "Little Dark Age" 

Little Dark Age [12 inch Analog]

Little Dark Age [12 inch Analog]

 

正直に言ってMGMTがデビューしたときはフレーミング・リップスのフォロワー的な印象しか持っておらず、また個人的に同時代の音楽をあまり追っていなかった時期だったこともあり、そこまで聴き込むことはしていなかった。だから、ファーストで大きな成功を収めたのちにバンドが停滞気味だったこともちゃんと把握しておらず、フジロックへの出演もアナウンスされたしちょっと聴いてみるかという程度の気持ちで耳にした本作なのだが、これが本当に素晴らしい作品だった。耳を引くのが何よりもその痛快にひねくれたポップネス。リード曲の"Me and Michael"こそ「一度聴いたらつい口ずさんでしまう」系のアンセムだが、そのほかの曲のグッドメロディーの応酬はどちらかと言うと一聴してそのキャッチーさに耳を奪われるものの、どこかひねくれが感じられるものが多く、その毒のような成分がこのアルバムの肝となっている。例えば、こちらもリード曲だったM3の"When You Die"なんかはマイナー調のコード進行で徐々に視界が開けていくかのような展開を持つ綺麗なハーモニーポップなのだが、カタルシスが得られるはずのコーラスの部分ではなぜか謎の笑い声のサンプリングが執拗に被せられ、何とも絶妙に脱臼させにかかってくる。このあたり、このアルバムに参加しているアリエル・ピンクほど突き抜けてはいないものの、それに通じる「おふざけ」が感じられ、スターにになりきれなかったインディーポップヒーローの矜持が感じられてグッとくる。基調となるのは80’s風のシンセポップだが、曲調や展開の面で随所にクイーン(M5"Tslamp")やピンク・フロイド(M9"When You're Smile)的な要素が垣間見えるのも個人的にとても好みで、リップスがローファイなサイケを出自としながらクイーンやピンク・フロイドの影響を飲みこんで、インディーロック的な過激さを保ちながらも独自の路線でビッグになっていったように、MGMTのこのアルバムも大衆性と趣味性が美しくも共存する瞬間に満ちており、音楽の可能性に触れたような気持ちになれる。

 

・Car Seat Headrest "Twin Fantasy"

Twin Fantasy [帯解説・歌詞対訳 / 国内仕様輸入盤 / 2CD] (OLE13472)

Twin Fantasy [帯解説・歌詞対訳 / 国内仕様輸入盤 / 2CD] (OLE13472)

 

タワレコで目に留まり試聴して一発で気に入りアップルミュージックで通しで聴いてぶっ飛ばされた1枚。2011年の自主制作盤の再レコーディング盤ということだが、バンドの中心のウィル・トレドはたぶん26歳くらい。昨今のローファイギターロックになかなか心を掴まれなかったのだが、これにはがっちりやられた。特徴的なのは、どこが曲と曲の境目かがわからないような目まぐるしい展開とそれでいて確固たるアルバム作品として纏め上げる構成の巧さ。普通のギターロックのアルバムは一曲がだいたい2分半から4分くらいなもので、たまに10分近い大曲があったとしても、それはあくまでもアルバムの中の「大曲」として身構えて聴いてしまうような立ち位置にあるように思うのだが、カー・シート・ヘッドレストの本作にあっては、10分超えの曲が2曲ありながらもいい意味で大曲としての存在感がない。それらはあくまでもアルバムの他の曲と並列に存在している。さらに言えばこのアルバムには「名曲」は存在せず、あるのは断続的に訪れる「最高の瞬間」だけだ。曲という区切りが曖昧で音が並列に置かれているような感覚は自分の知っているギターロックではこれまでに経験したことがなく、どちらかというと、このアルバムを聴くときの感覚は、ヒップホップ、あるいアンビエントミュージックのアルバムを聴いているようなそれに近く、そこが決定的に新しい。ミックステープ的とも言える雑多な展開で楽曲が詰め込まれながらも、不思議とアルバムとしての統一感があるのもこのアルバムの特徴で、例えばM3のフォーキーな小曲"Stop Smoking(We Love You)がM8の"High to Death"でふいにリプライズしてくるあたりは、往年のピンクフロイドの名盤を思い出すくらいの構成美への意志を感じた。本作が名盤たり得ているのは上に書いたような「最高の瞬間」が何度も訪れるようなアレンジセンスやメロディーセンスが基盤になっていることは間違いないのだが、それにとどまらない懐の広さに新時代の到来を感じさせられる。早くも2018年のベストアルバム候補。