Walky-Talky's Journal

INDIE POP FANCLUB

2018年3月に聴いた音楽

マンスリーレビュー3ヶ月目。年度末ということもあり仕事の忙しさからなかなか音楽を聴く時間が取れなかったような気がする。音源を買う数も少なかったし、買ったとしてもなかなか家で聴くことができず、もっぱら出勤時や退勤時などの移動中にアップルミュージックで音楽を聴くことが多く、そこで気に入ったものをアナログで購入するというのがサイクルになってきた。もちろんアップルミュージックにもなくアナログにもなっていない音源はあって、そういう場合はCDで買うことになるのだが、ストリーミングになってからリッピング作業も面倒くさくなってほとんどしなくなったので、やっぱり買うのであればアナログで買いたいというのが今日この頃。以下、今月聴き込んだ音楽。

 

・YOUNG FATHERS "COCOA SUGAR"

Cocoa Sugar [輸入アナログ限定盤・ブルー・ヴァイナル / DLコード付 / 1LP] (ZEN248X)_540 [Analog]

Cocoa Sugar [輸入アナログ限定盤・ブルー・ヴァイナル / DLコード付 / 1LP] (ZEN248X)_540 [Analog]

 

 イギリスのエジンバラをベースにする3人組ユニットの新譜。昨年マッシヴ・アタックの来日公演のオープニングアクトで初来日もしている。ライブを観たときは音響的な側面もあったかもしれないが、かなり混沌としていて掴みどころのない(=ノリきれない)印象を受けたのだが、このアルバムはその混沌としたエネルギーが見事にポップミュージックに昇華されていて、本当に素晴らしい。ベースとなるのはエレクトロニックを基調としたビートミュージックにラップやゴスペル的な歌唱が乗るブラックミュージックなのだが、オルタナティヴロックからの影響が感じられるところが面白い(もちろんギターは使われていない)。M7の"WOW"のタメのない性急なビートはスーサイドのようであるし、ラップでも歌でもないような言葉をボソボソと呟きながら確かにリズムを刻み、感情を爆発させるような歌唱が随所に聴こえてくるあたりは、ピクシーズのブラック・フランシスのようである。実際のところオルタナロックからどの程度の影響を受けているのかはわからないが、USからは決して出てこないようなミクスチャー感覚はUK的であるように感じられて、それこそオルタナティヴなラップミュージックであるように感じられる(あとボーカルエフェクトやドラムの音響処理が際立っており、ダブの要素が強いのもUK的)。M10の"WIRE "で"BEFORE I MURDER SOMEBODY BETTER GMME SOME MONEY (金をくれ、俺が誰かを殺してしまう前に)と歌われるように、歌詞の内容は怒りに満ちたものだが、幾重にも重なるコーラスとリズムの祝祭性からは、絶望だけではなく希望も聴き取ることができる。

 

・EVERYTHING IS RECORDED "EVERYTHINGIS RECORDED BY RICHARD RUSSEL"

EVERYTHING IS RECORDED BY RICHARD RUSSELL [限定輸入盤LP(イエロー・ヴァイナル)](XL883LPE) [Analog]

EVERYTHING IS RECORDED BY RICHARD RUSSELL [限定輸入盤LP(イエロー・ヴァイナル)](XL883LPE) [Analog]

  • アーティスト: EVERYTHING IS RECORDED,エヴリシング・イズ・レコーデッド
  • 出版社/メーカー: XL RECORDINGS
  • 発売日: 2018/02/16
  • メディア: LP Record
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 レディオヘッド、ベック、アデル、ジ・エックスエックスなど錚々たるインディーヒーローが所属するXLレコーディングスの総帥リチャード・ラッセルによるプロジェクト。まず名前からしてカッコいい。EVERYTHING IS RECORDED。その意味(意図)するところはわからないが、響きがもうカッコいい(もちろん音のほうも名前に劣らずカッコいい)。ヤング・ファーザーズについてUK的だと書いたが、このアルバムも多分にUK的なR&Bであるよう感じられる。例えば、サンファの歌唱による美しすぎる名曲M2"CLOSE BUT NOT QUITE "ではカーティス・メイフィールドの"THE MAKINGS OF YOU"がサンプリングされているが、この大胆すぎる手法はもはや「ネタ使い」ではなく、カーティスが残した録音物とサンファの「共演」とでも言うべきもので、このやり方は本場アメリカのR&Bでは聴いたことがない(もしかしたらこうした手法も割と一般的であるのかもしれないが、ここまで美しく融合しているのはこれまで聴いたことがなかった)。打ち込みが主体のメインストリームのR&B/ヒップホップの中で、生音を主体として細やかな音響処理を施していくやり方は、XLレコーディングスというオルタナティヴなレーベルカラーが表れているようにも感じ、とても耳馴染みがよく親近感を感じる。

 

・RHYE "BLOOD"

BLOOD [LP] [12 inch Analog]

BLOOD [LP] [12 inch Analog]

 

いつの間にかマイク・ミロシュの一人ユニットになっていたRHYEの2枚目。ミロシュはこの間に離婚もして今作のジャケットに写っている裸の女性は新しい恋人なのだそう。私生活に大きな変化があり単独ユニットになったことで音楽的にも何か変化があってもおかしくないように思えるが、そこは全然変わっていない。女性的で浮遊感のある透き通るようなボーカル、美しいメロディー、絶妙にムードを保つアレンジ、全てがあのファーストアルバムと変わっておらず、クオリティーは一段と上がっている。脱退したロビン・ハンニバルのQUADRONも素晴らしかったが、RHYEのこの独特な空気感はミロシュのものだったんだなと、よりパーソナルな音楽に感じられてなぜだか前作よりもリピートしている。前作からの変化について強いてあげるなら、ファーストに比べて今作はより空間を意識した作りになっているように感じられて、部屋で聴いていると音への没入感が半端なく、ジャケに映し出されているような幻の光景へ何度もトリップさせられてしまう。

 

・U.S. GIRLS "IN A POEM UNLIMITED "

IN A POEM UNLIMITED [LP] [12 inch Analog]

IN A POEM UNLIMITED [LP] [12 inch Analog]

 

ざらついていてヴィンテージ感のあるアートワークそのままにどこかレトロでキッチュなセンスがどろどろとした奇妙なポップミュージックに昇華された一枚。U.S. GIRLSと名乗っておきながらメーガン・レミーという女性の単独ユニットであるが、昨今女性の単独ユニットが多いアメリカにあっては、逆説的にそのまんまのユニット名であるように思える(実際の由来は知らない)。バンドでないからこそ個人が抱えた趣味をそのまま詰め込んだような音楽なのだが、とっちらかっているようでまとまりがある。絵の具を何重にも重ね塗りしているが、色調は統一されているような。つまり、最大公約数に落ち着いた音楽ではなく、個人的な趣味の最大公倍数を目指した足し算(掛け算?)の音楽。ごった煮具合にこの音楽をどう表現すればいいのか悩んでしまうが、フザケて言うならば、内省的なSSWによるコブシの効いた演歌を80sディスコに乗せてみた音楽、とでも言っておきたい。そんな音楽が無茶苦茶ポップなんだから好きにならずにはいられない。