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世武裕子 "Raw Scaramanga"

 

Raw Scaramanga

Raw Scaramanga

 

世武裕子の約2年振りとなるオリジナルアルバム。約2年振りといってもその間、映画音楽家として多数の劇伴を担当し、今年はミスチルの『重力と呼吸』にキーボーディストとして参加、現在開催中のミスチルツアーにもサポートミュージシャンとして帯同するなど、超精力的に活動を行なっている彼女。今回はシンガーソングライター世武裕子としての新作となり、デビュー10周年となる年にリリースされた本作に寄せられたコメント*1からも並々ならぬ気合が伝わってくるが、その言葉に違わず非常に熱量の高い内容となっている。

まずクリス・デイヴ参加の① "Vega"からして圧倒的。硬質なビートに世武のビョークを思わせる伸びやかで迷いのないボーカルとひんやりとした質感のシンセ、クラシカルな旋律のストリングスが乗るスケールのでかい一曲で、何やら凄い映画でも始まるんじゃないかと思わせるほどの壮大さ。続く②"Do One Thing Evertyday That Scares You"のテンションもやばい。ボーカルは"ha-ha-"と曲タイトルの連呼しかしていないような完全にJ-POPのセオリーから逸脱している曲で、性急なドラムのビートと反復するピアノの音色、凶暴なシンセとフリーキーなボーカルがバチバチとバトルをしながら曲が盛り上がっていく様に打ちのめされる。極め付けは③の"Gardien"。折り重なるシンセとドラムのバトルに歌ともポエトリーリーディグともつかない呪術的なボーカルからなる怪曲はニューウェーヴから発展したダンスミュージックのようで無茶苦茶かっこいい。他にも日本語詞でピアノ弾き語りで歌われる⑤スカートの美しさ、feat.クリス・デイヴというかVS.クリス・デイヴといった趣のスリル満点な⑦"John Doe"、映画『生きていだけで、愛』のテーマソングで静かな陶酔感のある⑨"1/5000"など聴きどころは多い。

各々の楽器とボーカルとがガチンコでぶつかり合っているような激しさが前面に出ている反面、対照的にしっとりと聴かせるような曲も映えている。アルバム全体を通してアートワークから得られるようなシネマティックなムードに貫かれていて非常に完成度が高い。メジャーのフィールドでここまで挑戦的なことをやっているのは端的に凄いことだと思う。ライブ観てみたい。


世武裕子「Vega」Music Video from『Raw Scaramanga』