Walky-Talky's Journal

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荒井由実 "MISSLIM"、あるいは紅白のユーミンが素晴らしかった話、あるいは星野源を応援します宣言。

 

MISSLIM

MISSLIM

 

晦日も仕事だったので帰宅してテレビをつけたらAquorsという子供のアイドル?グループが歌っているあたりで、そばを作ったり食べたりして束の間の年末気分を味わいながら何とはなしに観ていた紅白歌合戦ですが、ユーミン、本当によかった。ユーミンが紅白に出演することの意義のようなこともよくわからず考えもせず、ただ「お、ユーミン出てきたな」くらいの感じで観ていたのですが、「ひこうき雲からして、もうなんていい曲なんだとぐっと引き込まれた。そのあと、スタジオから本会場に移動して披露された「やさしさに包まれたなら」。これがもうやばかった。バックバンドのクレジットが表示されて「ほぼティンパン」であることに、おーと思っているのも束の間、おそらく歌い出しのタイミングに少し間に合わなかったのだと思うが、咄嗟にユーミンが「よかったら一緒に歌って!」というようなことを客席に向けて言うと、そこにいた老若男女が「ちーいさいころーはー、かーみさまがいてー」と大合唱。その前か後かはもう覚えていないが、その辺りでカメラに抜かれたaikoがボロボロと涙を流して号泣している。aikoがどんな気持ちで泣いていたのかは知る由もないが、液晶を通して伝わってくるポップミュージックの幸福な瞬間に、こちらも涙腺決壊寸前だった。最高の演奏に歌詞にメロディーの歌、そしてそれが誰もが知っている「みんなの歌」であることに心底感動した。で、その後に出てきたのが、この国のマスもコアも巻き込む現代のポップスター星野源。清潔感のある白いパーカーに太畝のコーデュロイ、ピンクのスニーカーという完璧に好感度の高い出で立ちで歌われる「アイデア」の射程の広さといったらなかった(少し前までNYの路上でMPCを叩いていたSTUTSが紅白で存分にフィーチャーされるなんて、誰が想像しただろう)。この一連の流れは本当に感動的で、数年前のあまちゃん紅白のときと同じくらいグッとくるものだった。

そんなわけで今日は一日ユーミン三昧。紅白で歌われた「やさしさに包まれたなら」が収録された"MISSLIM"は荒井由美名義で1974年にリリースされたセカンドアルバム。細野晴臣鈴木茂林立夫松任谷正隆らティンパンアレーの面々が主にバックバンドを務め、コーラスアレンジは山下達郎が担当しシュガーベイブがコーラスをする、という最強のバックに固められた一枚。この時代のユーミンはどれも名盤だが、この"MISSLIM"はキャンティのオーナー川添梶子の自宅で撮影されたとういアルバムカヴァーの品も手伝って一層名盤のオーラを放っている。流麗なストリングスアレンジとフルート、鈴木茂の上品なワウギター、手数が多いが完璧に的確なドラム&パーカッションなど、バックバンドの圧倒的な表現力で持って支えられるユーミンの透き通る歌に溜息しか漏れないM1の"生まれた街で"からして圧倒的にモダン。例えば「風街ろまん」なんかを聴くとそれなりに「時代」を感じてしまうものですが、「風街」からたった3年後にリリースされた本作は今の耳で聴いても全く古さを感じないもので、「ニューミュージック」とはよく言ったものだなと感じる。この圧倒的な深化のスピードはなんだったのか。さらにこのアルバムの凄いところは、最高級の質を備えていながら、誰でも知っているM3"やさしさに包まれたなら"のようなスタンダードがあることで。質だけを求めたら現代の日本のポップス(主にインディーポップに)だって物凄い水準のものもたくさんあるが、なかなか「スタンダード」にならない。これは時代に負うところも多分にあるかもしれないが、あの魔法のような瞬間を目の当たりにしてしまうと、「良質な音楽=スタンダード」という夢を見ずにはいられない。だからこそ、その領域に踏み込んでいる星野源を今応援せずにはいられないという気持ちになったのであります。


生まれた街で - 荒井由実

 

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